TOEICの平均点は616点。それでも日本の英語力が世界96位である理由
TOEICの平均点を調べる人の多くは、自分の点数が「普通」かどうかを知りたい。 この記事はその答えから始めて、もう一歩先まで行く。同じ日本人の英語力を、 TOEICの公式データ、英検の受験者数、文部科学省の全国調査、 そしてEFの世界ランキングという4つの一次資料で並べると、 「読めるのに話せない」という実感が、そのまま数字の形になって現れる。
TOEICの平均点は何点?(2025年度の公式データ)
IIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)が公開した「TOEIC Program DATA & ANALYSIS 2026」によると、2025年度のTOEIC Listening & Reading公開テストの平均スコアは616点 (リスニング337点、リーディング279点)で、受験者数は755,473人だった。 平均はこの3年間で少しずつ上がっている(2023年度612点、2024年度615点、2025年度616点)。
平均は誰が受けたかで変わる。同じ公開テストでも、社会人(308,493人)の平均は649点、 学生(434,399人)の平均は592点と、57点の差がある。企業や学校が団体で実施するIPテストは 受験者1,056,506人で平均492点。内訳は企業・団体が538点、学校が462点だ。 つまり「TOEICの平均点」と一口に言っても、462点から649点まで幅がある。 自分の点数を比べるなら、自分と同じ受け方をした集団の数字と比べるのが正しい。
TOEIC L&R 平均スコア、受験区分別(2025年度)
分布も見ておく価値がある。2025年度の公開テストでは、795点以上を取った受験者は122,641人で全体の16.2%、 595点以上は55.7%だった。逆に言えば、公開テスト受験者の約44%は595点未満にいる。 履歴書で「TOEIC 800点」が一つの目安として扱われるのは、それが受験者の上位およそ6分の1に入る水準だからだ。
日本の英語力は世界で何位?(EF EPI 2025)
EF EPI 2025(EF英語能力指数)で、日本のスコアは446点、123カ国・地域中96位だった。 前回から8点下がり、世界平均の488点を42点下回っている。この指数は世界で220万人の成人が受けた EFの無料テストの結果から算出されるもので、5段階のバンドのうち日本は最も低い「非常に低い」(450点未満)に入る。前回の454点から4点分、境界をまたいで落ちた形だ。
アジアの隣国と並べると差がはっきりする。韓国は522点で48位、日本より76点高い。 1位のオランダは624点だ。国内では関東が478点で最も高く、中国地方が436点で最も低い。 都市別では川崎(489点)、横浜(483点)、東京(480点)が上位に来るが、 日本で一番英語ができる都市でも、世界平均には届いていない。
EF EPI 2025 スコア比較
なぜ「読めるのに話せない」のか:技能別スコア
EF EPI 2025の日本の技能別スコアは、リーディング454点、リスニング437点、ライティング394点、 スピーキング393点で、リーディングとスピーキングの差は61点ある。 理解する側の2技能(読む・聞く)と、産出する側の2技能(書く・話す)の間に、 はっきりした段差がある形だ。
日本の技能別スコア
この段差は、日本が何を測ってきたかを見るとよく分かる。2025年度、TOEIC L&R公開テストの受験者は755,473人だったのに対し、 TOEIC Speaking公開テストの受験者は12,207人だった。比率にして約62対1、 L&R受験者の1.6%しか、話す力を公式に測っていない。 なお、そのSpeakingテストの平均スコアは131.5点(200点満点)である。
日本人は英語を測るとき、聞く力と読む力を62回測るあいだに、話す力を1回しか測っていない。 測られない技能は、伸びない。
学校の英語教育はどこまで来たか(文部科学省 令和7年度調査)
文部科学省の令和7年度「英語教育実施状況調査」(2026年6月18日公表)によると、 CEFR A1レベル(英検3級相当)以上の英語力を持つ中学3年生の割合は54.6%、 CEFR A2レベル(英検準2級相当)以上の高校3年生は52.4%で、いずれも調査開始以来の最高値だった。 平成25年度はそれぞれ32.2%と31.0%だったので、12年で20ポイント以上上がったことになる。
ただし、国の目標にはまだ届いていない。第4期教育振興基本計画(令和5年度から9年度)は、 中学卒業時にA1以上、高校卒業時にA2以上の生徒を6割以上、高校卒業時にB1(英検2級相当)以上を3割以上と定めているが、 B1以上の高校3年生は23.9%にとどまる。 教える側も変わりつつあり、CEFR B2(英検準1級相当)以上を取得している英語教師は中学校で58.5%、高校で84.4%だ。 この調査だけを詳しく読んだものは 令和7年度「英語教育実施状況調査」の解説にある。
国の目標と現状(公立中学・高校)
| 指標 | 平成25年度 | 令和7年度 | 目標 |
|---|---|---|---|
| 中学3年生 CEFR A1(英検3級相当)以上 | 32.2% | 54.6% | 60% |
| 高校3年生 CEFR A2(英検準2級相当)以上 | 31.0% | 52.4% | 60% |
| 高校3年生 CEFR B1(英検2級相当)以上 | (調査なし) | 23.9% | 30% |
同じ調査には、話す練習の量を示す数字もある。英語担当教師が発話の半分以上を英語で行っている 高等学校の学科は36.9%、ALT等が英語の授業の半分以上に参画している学科は12.2%。 そしてオンラインでの英会話を「全く行わせていない」高等学校は73.8%(中学校は74.5%)だ。 中学・高校で6年間英語を学んでも、実際に口を動かす時間は思ったより少ない。
英検は年間何人が受けているか
日本英語検定協会の「統合報告書 2025」によると、2024年度の英検テストファミリー(実用英語技能検定、英検IBA、英検Jr.)の志願者数は449万人で、 主要な国際英語試験と比べても上位の規模だ。小学生の受験者だけでも2024年度は375,991人で、この10年で約1.5倍に増えた。
英検の受験者がこれだけ多い理由の一つは、前の節で見た国の目標が英検の級で定義されていることにある。 中学卒業時に3級、高校卒業時に準2級という目安が学校現場に浸透し、英検が事実上の学習指標になった。 ここでも構図は同じで、日本は英語力を「測る」ことにかけては世界有数の熱心さを持ち、 ただしその大半は、話すことではなく、読むことと聞くことを測っている。
数字から分かること、そして自分の英語をどうするか
4つの資料を並べると、矛盾して見えた事実が一本につながる。TOEICの平均点は毎年少しずつ上がり(616点)、 中高生の英語力も過去最高(54.6%と52.4%)で、英検の受験者は449万人。それでもEF EPIでは96位で、 スピーキングは393点。上がっているのは測っている技能で、下がっているのは測っていない技能だ。
個人の学習に置き換えれば、結論はシンプルになる。TOEIC L&Rの点数が伸びているなら、 理解する力はすでにある。足りないのは、その英語を声に出す回数だ。 単語や文法を知っているのに口から出てこないという人は、知識の問題ではなく、 産出の練習量の問題であることがほとんどで、それは数字が示す日本全体の形とぴったり重なる。 まず手を付けやすいのは、自分が正しいと思って使っているカタカナ英語を点検することだ。ネイティブに通じない和製英語の一覧は、読めても話せない典型例が集まった場所でもある。