英語の語順が身につかない本当の理由:日本語には助詞があり、英語にはない
英語の語順が覚えられないのは記憶力の問題ではない。日本語は助詞が語の役割を示すので順番を変えても意味が変わらず、英語は位置そのものが役割なので変えると意味が変わる。その一点から、日本人が実際に間違える語順をすべて組み立て直す。
英語の語順はなぜ日本人にとって難しいのか
「太郎が花子を見た」と「花子を太郎が見た」は、語順が違っても意味が同じである。見たのは太郎で、見られたのは花子だ。なぜ入れ替えても壊れないかというと、誰が動作をしたかは「が」が、誰が受けたかは「を」が示していて、その情報が語順ではなく助詞に載っているからだ。日本語の語順は、強調したいものを前に出すための道具であって、意味を決める仕組みではない。
英語には、その助詞にあたるものが名詞につかない。Taro saw Hanako. と Hanako saw Taro. は、同じ三語を並べ替えただけで意味が正反対になる。名詞のどちらが主語でどちらが目的語かを決めているのは、動詞の左にあるか右にあるかという位置だけだ。つまり英語では、語順は装飾ではなく文法そのものである。日本人が英語の語順でつまずくのは規則を知らないからではなく、母語では語順が意味を担っていないため、語順を間違えたときに「意味が変わった」という手ごたえが生まれないからだ。
基本は5文型より「誰が・どうする」を先に置くこと
学校では5文型を習うが、話すときに文型を思い出している時間はない。実用的には、英語の文はほぼ例外なく「主語(誰が)」から始まり、すぐ「動詞(どうする)」が来る、という一本の規則で足りる。I study English. Kate teaches Japanese students. The train left. 日本語で最後に来る述語が、英語では二番目に来る。この位置の差が、実際の会話で一番効いてくる。
なぜ効くかというと、日本語は述語が最後に来るおかげで、話しながら結論を保留できるからだ。「昨日、駅の近くの新しいカフェで、友達と、二時間くらい」まで言ってから、最後に「話した」と決めればよい。英語ではそれができない。I の次にはもう動詞を置かなければならず、talked なのか met なのか stayed なのかを、文を始めた時点で決めておく必要がある。英語を話すときに詰まる瞬間の多くは、単語が出てこないのではなく、動詞を先に決める習慣がないことから来ている。まず動詞を決めてから口を開く、というだけで詰まりは目に見えて減る。
日本語と英語は鏡像になっている:修飾は前か、後ろか
日本語は、説明する語を必ず説明される語の前に置く。「私が昨日買った本」では、本という中心が一番最後に来る。英語は逆で、中心を先に置いてから後ろに説明を足す。the book I bought yesterday となり、book が先頭近くに来る。二つの言語は、同じ内容を組み立てるのに正反対の向きに伸びていく。長い名詞のかたまりを英語で作ろうとすると急に難しくなるのは、頭の中で日本語の順に組み立ててから、それを反転させて出そうとしているからだ。
同じ反転は助詞と前置詞のあいだにも起きる。日本語の助詞は名詞の後ろにつく(東京に、友達と、電車で)。英語の前置詞は名詞の前につく(to Tokyo、with my friend、by train)。名前のとおり、片方は後置で片方は前置だ。だから to や with を「に」「と」の訳語として覚えるのではなく、前に出る部品として覚え直したほうが速い。前置詞を置いてから名詞を置く、という順番を体に入れると、日本語の助詞の位置に引きずられて I Tokyo to went. のような並びが出てくることがなくなる。
時と場所の順番が、日本語と逆になる
日本語では「昨日、図書館で勉強した」と言う。時が先で、場所が後ろだ。英語はこの二つが逆で、I studied at the library yesterday. のように場所が先、時が後ろに来る。日本語の順のまま英語にすると I studied yesterday at the library. となり、通じはするが不自然に響く。細かく見える差だが、この一点を直すだけで文の印象がかなり変わる。
副詞が複数あるときの標準的な並びは、様態、場所、時の順である。She spoke quietly in the hallway last night. どう、どこで、いつ、という順番だ。時を強調したいときだけ、文頭に出して Last night, she spoke quietly in the hallway. とすることができる。つまり英語で時を先に置きたいなら、文の途中ではなく文頭に置く。日本語の語感に近い形を英語で作りたいときの、唯一の正規ルートがこれである。
間接疑問文で語順が戻ってしまう、最も多い間違い
英語で最もよく起きる語順の誤りは、疑問詞が文の途中に入るときに現れる。Where is it? は正しいが、それを別の文の中に入れると Do you know where it is? となり、is が主語の後ろに戻る。日本語には疑問文で語順を入れ替える仕組みがそもそもないため、「どこにあるか知っていますか」を素直に置き換えると Do you know where is it? が出てくる。話し慣れている人でも、緊張すると最初に戻る間違いがこれだ。
覚え方は単純で、疑問詞のあとが文の中身になっているときは、ふつうの「主語のあとに動詞」に戻す、と考える。I don't know what he wants.(what he wants であって what does he want ではない)、Could you tell me where the station is?、I'm not sure when the meeting starts. どれも疑問詞の後ろが平叙文の並びになっている。逆に、単独の疑問文のときだけ入れ替えが起きる。入れ替えは例外のほうだと考えておくと、迷ったときに正解を選びやすい。
形容詞を並べる順番には決まりがある
形容詞を二つ以上重ねるとき、英語には決まった順番がある。おおむね、意見、大きさ、古さ、形、色、出身、素材、目的の順だ。a beautiful small old round wooden table のように並び、この順を崩すと文法的に誤りというより、単に耳が受けつけない響きになる。a wooden old small table と聞くとネイティブは違和感を持つ。日本語にはここまで厳密な序列がないので、「小さくて古い木のテーブル」を語順そのまま英語に移すと崩れることがある。
実際の会話では、形容詞を三つも四つも重ねる場面はほとんどない。だから丸暗記するより、二語のときの感覚だけ持っておけば足りる。意見や評価を表す語(nice、beautiful、important)が先、事実を表す語(small、red、Japanese、plastic)が後ろ、という一本の線だ。a nice Japanese restaurant は自然で、a Japanese nice restaurant は不自然になる。順番に迷ったら、主観が先で客観が後ろ、と思い出せばよい。
語順は知識ではなく速度の問題:どう練習するか
ここまでの規則は、読めば十分に理解できる。それでも会話で崩れるのは、語順が知識ではなく速度の問題だからだ。書くときは頭の中で日本語の順に組み立ててから反転させる時間があるが、話すときにはその時間がない。日本語の順で口を開いてしまうと、途中で気づいても戻れず、文が途中で壊れる。だから練習でやるべきことは、規則をもう一度読むことではなく、反転を挟まずに英語の順で組み立てる回数を増やすことになる。
具体的には、短い文で「主語を言う前に動詞を決める」ことだけを意識して口に出す練習が効く。たとえば身の回りのできごとを、必ず I か We か固有名詞で始めて、二語目に動詞を置いて言い切る。長くしたくなったら、そこから右に足していく。左に足そうとした瞬間に日本語の組み立てに戻っているので、そこで気づけるようになれば十分だ。相手がいなくても、声に出して同じ形を何十回か通せば速度は上がる。名詞まわりの判断が同時に必要になるので、冠詞に自信がない人は英語の冠詞の使い分けを、単語が英語の順で出てこない原因がカタカナ側にある人は和製英語の一覧を、あわせて見ておくと練習の効率が上がる。
よくある質問
英語の語順の基本は何ですか?
主語、動詞、目的語の順である。日本語の「主語、目的語、動詞」とは動詞の位置が違い、英語では動詞が二番目に来る。英語の名詞には助詞にあたる印がつかないため、動詞の左にあるか右にあるかだけが主語と目的語を区別している。Taro saw Hanako. と Hanako saw Taro. が正反対の意味になるのはそのためで、英語では語順が意味そのものを決めている。
なぜ日本語は語順が自由で、英語は自由ではないのですか?
日本語は「が」「を」「に」といった助詞が名詞の役割を示すので、名詞をどこに置いても役割が変わらない。英語の名詞にはその印がなく、位置だけが役割を示す。だから日本語では語順を変えると強調点が変わるだけだが、英語では語順を変えると誰が誰に何をしたかが変わってしまう。日本語の語順の自由さは助詞が支えており、その支えが英語にはない、というのが両者の違いである。
Do you know where is it? はなぜ間違いなのですか?
疑問詞のあとが別の文の中身になっているときは、主語のあとに動詞という普通の並びに戻すためである。正しくは Do you know where it is? となる。Where is it? のように単独で疑問文を作るときだけ、動詞が主語の前に出る。日本語には疑問文で語順を入れ替える仕組みがないため、この入れ替えを戻し忘れる誤りが日本人には特に多い。
英語では時と場所のどちらを先に言いますか?
場所が先で、時が後ろである。I studied at the library yesterday. が自然な並びで、日本語の「昨日、図書館で」とは逆になる。副詞が複数あるときの標準的な順番は、様態、場所、時の順である。時を先に出したい場合は文の途中ではなく文頭に置き、Last night, she spoke quietly in the hallway. のようにする。
5文型は覚える必要がありますか?
読解や文法の学習では役に立つが、話すときに文型を思い出している時間はない。会話で必要なのは、主語を言い出す前に動詞を決めておくことと、文を左ではなく右に伸ばしていくことの二つだけである。この二つが速くなれば、5文型はあとから結果として身についているという順番になる。