中3の54.6%、高3の52.4%。令和7年度「英語教育実施状況調査」を読む
文部科学省が2026年6月18日に公表した令和7年度「英語教育実施状況調査」は、 公立中学校9,101校と高等学校3,230校を対象にした全数調査で、 日本の学校英語について公表されている最も新しい全国データだ。 ただし結果は1.67MBのPDFに図表のまま置かれていて、 数字を拾うには相当な手間がかかる。このページは、その中から 生徒・教師・授業・ALT・ICTの5つの断面を取り出して並べたものである。
英語教育実施状況調査とは何か、いつの数字なのか
文部科学省の令和7年度「英語教育実施状況調査」は2026年6月18日に公表され、 調査実施基準日は令和8年2月1日(2026年2月1日)である。 回答した学校は公立中学校9,101校、高等学校3,230校、 特別支援学校中学部210校、特別支援学校高等部187校で、 公立の中学校と高等学校はすべて対象になる全数調査だ。 平成25年度から毎年実施されており(令和2年度のみ新型コロナウイルスの影響で中止)、 13年分の同じ指標が並ぶという点で、日本の英語教育を追跡できるほぼ唯一の公式データになっている。
読むときに一つだけ注意すべき点がある。この調査の「CEFR A1レベル相当以上」には、 実際に英検などの外部試験で級やスコアを取得した生徒だけでなく、 校内のパフォーマンステストやCAN-DOリストの結果から 「相当する英語力がある」と英語担当教師が判断した生徒が含まれる。 令和7年度の中学3年生54.6%の内訳は、外部試験を取得している生徒が32.6%、 教師の判断による生徒が22.0%で、後者が4割を占める。 つまりこれは統一テストの結果ではなく、外部試験と現場判断を足し合わせた指標である。
中学3年生の何%がCEFR A1相当以上なのか
令和7年度調査で、CEFR A1レベル(英検3級相当)以上の英語力を持つ中学3年生の割合は54.6%だった。 令和6年度の52.4%から2.2ポイント上がり、調査開始時の平成25年度32.2%からは22.4ポイントの上昇で、 13年間で最も高い水準になっている。 第4期教育振興基本計画(令和5年度から令和9年度)は中学卒業段階で6割以上を目標としているので、 残りは5.4ポイントだ。
伸び方には特徴がある。令和5年度に50.0%へ到達したあと、 令和6年度は2.4ポイント、令和7年度は2.2ポイントと、 毎年2ポイント台の増加が続いている。このペースが保たれれば 令和9年度に59%前後で、目標の60%にわずかに届かない計算になる。 自治体別に見ると、目標である50%以上を達成したのは令和7年度で67自治体中39自治体だった。 令和5年度は28自治体、令和6年度は37自治体なので、地域差は縮まりつつあるが、 まだ28の自治体が半数に届いていない。
CEFR A1相当以上の中学3年生の割合
高校3年生はA2以上・B1以上がそれぞれ何%か
高校3年生でCEFR A2レベル(英検準2級相当)以上は52.4%、 CEFR B1レベル(英検2級相当)以上は23.9%だった。 A2以上は令和6年度の51.6%から0.8ポイント、B1以上は21.2%から2.7ポイントの上昇である。 国の目標はA2以上が6割、B1以上が3割なので、A2は7.6ポイント、B1は6.1ポイント足りない。
中学と高校で伸び方が違うのは見ておく価値がある。 中学のA1以上が毎年2ポイント台で伸びているのに対し、 高校のA2以上は令和5年度50.6%、令和6年度51.6%、令和7年度52.4%と、 2年で1.8ポイントしか動いていない。目標まであと7.6ポイントを2年で埋めるには、 直近の伸び幅の4倍以上が必要になる計算だ。 一方でB1以上は2.7ポイント伸びており、上位層のほうが速く動いている。 都道府県別では、A2以上50%の目標を達成したのは令和7年度で47都道府県中26で、 令和6年度の21から5つ増えた。
高校3年生:CEFR A2相当以上(上)とB1相当以上(下)
学科によってどれくらい差があるのか
全国平均の52.4%という数字は、学科をまたいで平均したものだ。 分けて見ると差は非常に大きい。令和7年度、CEFR A2相当以上の高校3年生の割合は、 英語教育を主とする学科および国際関係に関する学科で94.0%、普通科で65.8%、 その他の専門学科および総合学科で22.5%だった。 普通科とその他の専門学科・総合学科の間には43.3ポイントの開きがある。
B1以上ではさらに開く。英語学科等が71.8%、普通科が30.6%、 その他の専門学科・総合学科が7.4%で、比にすると約10倍だ。 普通科だけを見れば、B1以上30.6%はすでに国の3割目標を超えている。 つまり全国平均が目標に届いていない主な理由は、普通科の生徒が伸び悩んでいることではなく、 専門学科・総合学科との差が大きいままであることにある。 平均値を1つだけ引用するとこの構造は消えてしまうので、 学科別の3つの数字を並べて読むほうが実態に近い。
学科別の高校3年生の英語力(令和7年度)
| 学科 | A2相当以上 | B1相当以上 |
|---|---|---|
| 英語教育を主とする学科・国際関係に関する学科 | 94.0% | 71.8% |
| 普通科 | 65.8% | 30.6% |
| その他の専門学科・総合学科 | 22.5% | 7.4% |
英語の先生の英語力はどれくらいなのか
令和7年度、CEFR B2レベル(英検準1級相当)以上を取得している英語担当教師の割合は、 中学校で58.5%、高等学校で84.4%だった。 中学校は令和6年度の46.2%から12.3ポイントという、この調査で最大級の一年の伸びを記録している (平成25年度は27.9%だった)。 高等学校も平成25年度の52.7%から31.7ポイント上がっている。 第2期教育振興基本計画が掲げていた中学校50%・高等学校75%という目標は、 どちらもすでに超えたことになる。
より高いC1レベル以上になると景色が変わる。 高等学校でC1相当以上を取得している教師は25.6%で、 令和4年度の22.5%から3年で3.1ポイントしか動いていない。 中学校のC1相当以上は令和7年度から調査項目に加わったばかりで11.1%である。 この調査自身の相関分析でも、高校生のB1相当以上の取得割合の増加には 教師のC1相当以上の取得が影響している、と指摘されている。 つまり生徒の上位層を押し上げる要素として教師のC1が挙がっているのに、 そのC1が最も動きの遅い指標になっている。
英語担当教師の英語力(令和7年度)
| 指標 | 過去 | 令和7年度 |
|---|---|---|
| 中学校 CEFR B2(英検準1級相当)以上 | 27.9%(平成25年度) | 58.5% |
| 中学校 CEFR C1以上 | (令和7年度が初回) | 11.1% |
| 高等学校 CEFR B2(英検準1級相当)以上 | 52.7%(平成25年度) | 84.4% |
| 高等学校 CEFR C1以上 | 22.5%(令和4年度) | 25.6% |
授業はどれくらい英語で行われているのか
高等学校学習指導要領は「授業は英語で行うことを基本とする」と定めている。 令和7年度調査によると、英語担当教師が発話の半分以上を英語で行っている高等学校の学科の割合は、 全体で36.9%だった。裏返せば、6割以上の学科では教師の発話の半分以上が日本語ということになる。 学科別では、英語教育を主とする学科および国際関係に関する学科が74.4%で突出している。
科目でも差がある。5領域を総合的に扱う「英語コミュニケーション」では41.2%だが、 発信力を高める科目群である「論理・表現」では27.5%まで下がる。 本来もっとも英語で運用させたい科目のほうが、教師の英語使用が少ないという逆転が起きている。 外国語指導助手(ALT)についても、英語の授業の半分以上にALT等が参画している高等学校の学科は 令和7年度で12.2%にとどまった(令和5年度10.8%、令和6年度13.5%)。 ALTが授業に入っている学科でも、その関与は多くの場合、授業時数全体の1割から2割の範囲である。
学校でオンライン英会話はどれくらい行われているか
この調査で最も分かりやすい数字はここにある。 遠隔地の生徒や教師、ALT等と英語で話す「オンライン会話」を 「全く行わせていない」と答えた学校の割合は、 中学校で74.5%、高等学校で73.8%だった。 公立中学校・高等学校のおよそ4校に3校では、英語の授業で オンラインでの会話が一度も行われていないことになる。 文字でのやり取り(メールやチャット等を英語で行うもの)も、 中学校54.8%、高等学校55.8%が「全く行わせていない」と回答している。
同じ調査は、ICT機器の活用や生徒の英語による言語活動、 教師の英語使用と英語力、ALTの授業内外の活動が、 いずれも生徒の英語力と正の相関を示したと明記している。 つまり効果が確認されている活動が、4校に3校では行われていない。 個人の学習計画にとって、これは学校を責める話ではなく、 単に「話す回数は学校の外で作るしかない」という前提として読むのが実用的だ。
英語の授業でオンライン会話を「全く行わせていない」学校の割合
公立中学校の74.5%、公立高等学校の73.8%は、英語の授業でオンライン会話を一度も行っていない。 同じ調査が、その活動は生徒の英語力と正の相関があると書いている。
この数字を自分の学習にどう使うか
調査全体を通して読むと、輪郭ははっきりしている。 生徒の英語力は13年間ずっと上がり続け(中3で32.2%から54.6%)、 教師の英語力はこの1年で大きく動いた(中学校で46.2%から58.5%)。 伸びていないのは、話す機会そのものだ。 教師の発話の半分以上が英語である高校は36.9%、 ALTが授業の半分以上に入る学科は12.2%、 オンライン会話を全く行わない学校は約4分の3。 学校の英語は測る力と教える力を着実に上げてきたが、 生徒が口を動かす回数は、制度の側からはまだ十分に供給されていない。
だから個人の学習で優先順位をつけるなら、単語帳や文法書をもう1冊増やすより、 学校が供給していない部分に時間を寄せるほうが効く。 必要な総時間の話は英語習得に必要な時間のリサーチに、同じ構図を試験のスコアから見た議論はTOEIC平均点とEF EPIの記事にまとめてある。1日30分の配分に落とす具体的な方法は英会話の独学ガイドが扱っている。