英検の合格率は公表されていない。公式データで固定されているのは合格基準スコアのほう
「英検 合格率」で検索すると、級ごとの数字を並べたページが何十件も出てくる。 しかし日本英語検定協会が級別の合格率を公表していたのは2015年度までで、 英検CSEスコアが導入された2016年度以降、公式な合格率は存在しない。 代わりに協会が公表し、しかも回ごとに変わらないと明言しているものがある。 合格基準スコアだ。この記事は、協会自身の公表資料だけを使って、 英検について確実に分かることと分からないことを分ける。
英検の合格率は公表されているのか
結論から言うと、公表されていない。日本英語検定協会が級別の合格率を公表していたのは2015年度までで、 英検CSEスコアが導入された2016年度以降の公式な合格率は、どの級についても存在しない。 協会の一次試験解答速報のページには「合格率、採点などに関するお問い合わせにはお答えできません」と明記されている。 つまり、いま検索で出てくる「英検2級の合格率は約25%」といった数字は、 塾や英会話サービスが自社の受講生データや2015年度以前の古い公表値から推定したものであり、 協会が認めた数字ではない。
これは情報が隠されているという話ではなく、測り方が変わったという話だ。 2016年度以降の英検は、受験者の正答パターンから統計的手法(項目応答理論)でスコアを算出する方式に変わった。 この方式では、回によって問題の難易度が違っても同じ実力なら同じスコアが出る。 逆に言えば「今回の合格率は何%だった」という回ごとの数字は、受験者にとって意味のある指標ではなくなった。 代わりに意味を持つようになったのが、次に見る合格基準スコアである。
英検で公表されていないのは合格率であり、合格ラインではない。 合格ラインは全級について公表され、しかも回ごとに変わらないと協会が明言している。
英検の合格点は何点なのか(全8級の合格基準スコア)
協会は「各級の合格基準スコア(英検CSEスコア)は固定されています」と公式に述べている。 英検準1級の一次試験の合格基準スコアは2,250点満点中1,792点で、得点率にすると79.6%にあたる。 英検2級は1,950点満点中1,520点(77.9%)、英検3級は1,650点満点中1,103点(66.8%)である。 満点が級ごとに違うのは、技能ごとの満点が級ごとに定められているからだ。 1級は1技能850点、準1級は750点、2級は650点、準2級プラスは625点、準2級は600点、 3級は550点、4級は500点、5級は425点で、一次試験はそこに技能数を掛けた値が満点になる。
英検 全8級の合格基準スコアと満点
| 級 | 一次 合格基準 / 満点 | 一次 得点率 | 二次 合格基準 / 満点 | CEFR |
|---|---|---|---|---|
| 1級 | 2,028 / 2,550 | 79.5% | 602 / 850 | C1 または B2 |
| 準1級 | 1,792 / 2,250 | 79.6% | 512 / 750 | B2 または B1 |
| 2級 | 1,520 / 1,950 | 77.9% | 460 / 650 | B1 または A2 |
| 準2級プラス | 1,402 / 1,875 | 74.8% | 427 / 625 | (判定対象外) |
| 準2級 | 1,322 / 1,800 | 73.4% | 406 / 600 | A2 または A1 |
| 3級 | 1,103 / 1,650 | 66.8% | 353 / 550 | A1 |
| 4級 | 622 / 1,000 | 62.2% | (実施なし) | (判定対象外) |
| 5級 | 419 / 850 | 49.3% | (実施なし) | (判定対象外) |
表を縦に見ると、英検が何を要求しているかが見える。 得点率は5級の49.3%から準1級の79.6%まで、級が上がるほど一貫して上がっていく。 5級だけが5割を切っているのは、初めて英語の試験を受ける学習者にとっての入り口として設計されているからだ。 逆に、履歴書や入試で価値を持つ2級以上は、どれも8割近い得点率を求められる。 「英検は思ったより低い点で受かる」という印象がよく語られるが、 少なくとも合格基準スコアの上ではそうではない。
一次試験に必要な得点率(合格基準スコア ÷ 満点)
何割正解すれば合格できるのか
ここが多くのページで混同されている点だ。前の表の得点率は、CSEスコアという尺度の上での割合であって、 問題を何問正解すればよいかとは別物である。 協会は「スコアは各回の全答案採点後、統計的手法(Item Response Theory)を用いて算出しているため、 受験者の皆さまがご自身の正答数でスコアを算出することはできません」と明言している。 つまり原理的に、過去問を解いて自己採点しても、合格基準に届いたかどうかは判定できない。
ただし協会は一度だけ、正答率の目安を公表している。同じ公式ページにある一文がそれだ。 2016年度第1回の一次試験では、1級と準1級は各技能での正答率が7割程度、2級以下は各技能6割程度の正答率だった受験者の多くが合格した。 この数字は現在も協会のサイトに掲載され続けている、正答数に関する唯一の公式な目安である。 重要なのは「各技能で」という部分で、得意な技能で稼いで苦手な技能を埋め合わせる戦略は、 CSEスコアでは以前ほど効かない。技能ごとに満点が均等に配分されているため、 1技能だけ極端に低いと総合スコアがそのぶん大きく落ちる。
英検は年間何人が受けているのか
合格率が分からなくても、規模は分かる。 2025年度の英検テストファミリーの志願者数は454万人で、前年度から5万人増えた。 自宅近くの会場で土日に4技能を1日で受けられる英検S-CBTの志願者数は58万8千人で、前年比115%だった。 これは日本英語検定協会が2026年6月2日に公開した「統合報告書2026」の数字である。
2025年度 英検の志願者数
同じ報告書には、受験者側にとって実務的な変更も二つ載っている。 2026年度第1回検定から、英検(従来型)、英検S-CBT、英検S-Interviewの検定料が全級一律で100円引き下げられた。 そして5級よりさらに前の段階、つまり英語学習を始めたばかりの層に向けた6級と7級の新設も進んでいる。 規模が伸び続けている試験が値上げではなく値下げをし、下の級を増やしているという事実は、 英検がいま誰を取りに行っているかを素直に示している。学習の入り口にいる層だ。
英検の級は世界基準ではどのレベルにあたるのか
協会は成績表に「4技能総合CEFR」を表示しており、級ごとに判定されるCEFRレベルも公表している。 1級はC1またはB2、準1級はB2またはB1、2級はB1またはA2、準2級はA2またはA1、3級はA1だ。 同じ級に二つのレベルが並んでいるのは、合否ではなく4技能の総合スコアでCEFRを判定しているからで、 同じ2級合格者でもスコア次第でB1にもA2にもなる。4級と5級は4技能を測定していないため判定対象外である。
この対応関係は、文部科学省が学校教育の目標を英検の級で語る理由でもある。 中学卒業時にCEFR A1相当(英検3級相当)以上、高校卒業時にA2相当(英検準2級相当)以上という目標が、 そのまま英検の級に翻訳できる。日本の英語教育全体の到達度をこの尺度で読んだものは令和7年度「英語教育実施状況調査」の解説にある。
合格率が分からないなら、何を目安に勉強すればいいのか
合格率は、受けるかどうかを決めるための数字だ。合格するための数字ではない。 そして英検の場合、合格するための数字のほうは全部公表されている。 自分の級の一次試験の合格基準スコア、技能ごとの満点、そして各技能で6割から7割という正答率の目安。 過去問で自己採点するときも、合計点ではなく技能ごとの正答率を出して、 一番低い技能がこの目安を割っていないかを見るほうが、合格率を探すよりはるかに実用的である。
技能ごとに見たとき、多くの学習者にとって一番低く出るのはスピーキングだ。 3級以上の二次試験は面接形式で、必要な得点率は64.2%から70.8%と一次より低いにもかかわらず、 練習量だけが極端に少ないまま本番を迎える人が多い。 リーディングとリスニングは一人でも量をこなせるが、話す練習だけは相手がいないと始まらないからだ。 英語を声に出す回数そのものが日本全体で足りていないことはTOEICの平均点とEF EPIを突き合わせたリサーチにまとめてある。二次試験の対策は、面接の型を覚えることよりも、 英語で質問されて英語で答えるという往復を何十回も経験しておくことのほうが効く。
数値の扱いについて: 各級の合格基準スコアそのもの(一次2,028点など)は、協会の公式ページ上では表①という画像として掲載されているため、ページのテキストからは読み取れない。本記事ではこれらの値を、同ページを出典として明記している第三者の一覧表と、上記の公式ページから直接読み取った技能別満点との整合という二つの方法で照合したうえで掲載している。後者は厳密な検算になっており、たとえば準1級は750点×3技能=2,250点、2級は650点×3技能=1,950点、二技能のみで判定される4級は500点×2技能=1,000点、5級は425点×2技能=850点と、8級すべてで満点が一致する。得点率(79.6%など)は協会が公表している値ではなく、合格基準スコアを満点で割って本記事が計算したものである。 データと図表は、出典として「SpeakBase リサーチ」と本ページへのリンクを明記すれば自由に利用できる。